シルミド

仕事帰りに見に行って来ました。見終わった後・・・どっしりと重い錘を身体に乗せられたような・・・そんな気分になりました。
話題の映画だったからというのもあるのですが・・・この映画を見たいと思った一番の理由は、主演がソル・ギョングだったからです。この前見た「オアシス」とはまるで別人のように、逞しく鋭く、そして寡黙な男を演じていました。彼は作品毎に雰囲気から体格まで何もかも大きく変えてくるタイプ・・・ようするに「デニーロ・アプローチ」型の俳優さんなんですが、今回も徹底してましたね。今回の映画は、主役が目立つような映画ではなくて、男達の集団の物語なんですけど・・・そんな中で、ソル・ギョングは目立ち過ぎず、埋もれずに存在感を出していたと思います。
意外だったのが・・・スパルタ鬼軍曹役として出演していたホ・ジュノ。ドラマ「オールイン」では、ちょっと間の抜けたところのある役を演じてる彼ですが・・・この映画では凄まじい鬼の役柄で・・・それでいて熱血漢という役処でした。この人に対する印象が・・・かなり変わりました。カッコイイ男らしい役でした。


さて・・・「シルミド事件」について・・・何と言ったらいいものやら・・・
映画を見てる時は「いったいどこまでが実話なんだろう?」と思っていたのですが、後でパンフレットを読んでみると、北朝鮮軍の青瓦台襲撃事件から、684部隊のバスハイジャック事件まで、実際に起こった出来事だそうで・・・たしかに、普通のドラマとして見たら途中で中だるみっぽく思えるところもあったんですが・・・「実話」というのはデカイな・・・と。「殺人の追憶」もそうでしたが、映画を見終わった後、現実に戻っても・・・その世界は今まで見てきた世界の続きであって、そこでファンタジーが終わらない・・・何ともやりきれない気持ちが残ります。
どの国にも・・・この国にだって、清算出来てない歴史・負の遺産ってやつがあるわけで・・・その様々なテーマに挑んでいるのが、今の韓国映画界なんでしょうね。勿論それだけでは語れない世界だとは思うんですけど・・・「殺人の追憶」「シルミド」、決して派手ではないこれらの映画が韓国で大ヒットしたのは、制作側の・・・所謂「消された歴史」に対する挑戦を、観る側が評価し、真摯に受け止めている証拠ではないでしょうか?