GANDHI

小さい頃、時々父に映画館に連れて行ってもらったことがありました。そのラインナップは・・・

そしてこの「ガンジー」でした。・・・今にして思うと、父の趣向がイマイチよく分からん・・・まぁこういう父の子供だったから一貫性の無い趣向の人間になったんだと思うけど。
小さい頃見たときの記憶を呼び覚ましながら見ました。映画スタート時の南ア鉄道でガンジーが差別を受けて憤慨するシーン、南アでの人種差別に抵抗する運動でブッ叩かれるシーン・・・などなどは覚えていたのですが、その後の激しい対英国独立運動のシーンの思い出が、すっぽり頭から抜け落ちていることに気がつきました。終盤のシーンは覚えていたから、決して居眠りしていた訳ではない筈(汗)・・・小さい頃は、「ガンジー主義」による闘争の厳しさとか、独立獲得後の宗教戦争の泥沼さとか・・・当時の自分では分からなかったのかなぁ・・・っていうか、このとき俺幾つだっけ? そんな子供にこの映画を見せる父も父だが・・・
「非暴力、非協力、不服従」闘争はその言葉から単純な平和主義だと取られがちですが、この映画を見るとこれは正に激しい「戦争」であったことがわかります。武器では戦えないインド国民が、まずは徹底して服従を拒否し、帝国支配の拠り所となっていた英国産の衣料を焼き捨て、自足生活の確保の為に塩を作り・・・一歩一歩確実にイギリスを追い詰めていく。しかも、英国メディアを味方につけ、英国市民の世論によって「非暴力」に対する帝国主義の暴力を訴える。これは凄まじい「弱者の戦い」だと感じました。
しかしその「弱者の戦い」は、独立後の印パ紛争では通用しない。ガンジーは捨て身の断食で国民に訴え、何とか紛争を止めさせるが、それは決して全ての解決ではなかった。パキスタンとの統一を訴えるガンジーはその思想が故にヒンドゥー教原理主義者に疎まれ、そして暗殺されてしまう・・・
パキスタンとの紛争に反対してガンジーが死の断食を続行する中、彼の住む家を取り囲むヒンズー教徒から「ガンジーを殺せ!」という声が上がる。その瞬間、ネール首相が凄まじい剣幕で民衆を怒鳴りつけ「誰だ! まず私を殺せ! 私を殺せ!」と絶叫する・・・このシーンが頭から離れませんでした。
この映画はインド独立運動の光も闇も全て、このガンジーの一生を忠実に再現することによって見事に再現していると思います。いくら長編映画とはいえ、人の人生を描くには時間が足らない訳で、純粋な物語としてみるとストーリーをハショったり不親切な部分が何ヶ所か出てくるのですが・・・それでも、見終えた後に心にのしかかる重みは強烈なものがありました。
また・・・自分は普段宗教について縁遠い人間なんですが、それでもこの映画を見ると「宗教」的拠り所の強さについて考えずにはいられません。人は、自分を超える「神」という存在があって初めて、怒りや憎しみを捨てられるんだなと実感させられました。晩年の彼は度々起こる暴動や民族紛争に対して断食で反対するのですが、それは「神格化された自分を傷つけることによって自分を敬う人間を諭す」行為であり・・・逆に言えば、人を導く神とはそういう存在の人間のことを言うのかもしれません。