国家の罠

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

様々なところで反響が大きい本だったので、自分も読んでみました。鈴木宗男の盟友として、一連の「ムネオハウス」疑惑等に巻き込まれて逮捕された外務省対露担当外務官の手記です。読み終えた後で強く感じたのは、この佐藤さんという人の強烈な職業人気質でした。本全体の構成も素晴らしかったのですが、一つ一つの出来事について、非常に細かい事柄に至るまで凄まじく「再現的な」描写を行っているのに驚かされました。外務官とはかくあるべきなんでしょうね。また、文章を読んでて、非常に筋の通った、嘘を書けない体質の人なんだなと思わされました。この本の内容はほとんどが会話の一つ一つに至るまで非常に正確に忠実に記載されてあるのですが、一部だけ「私の記憶によると」とか「・・・という記憶が残っている」という風に、「記憶」という言葉を使って少しぼやかした表現が使ってあります。ある一日の夕食に食べた内容までこと細かに記述しているように徹底して精細に記述されてあるこの本の中で、この部分だけは明らかに異質なものを感じました。これは、非常にナーバスな事に触れる為なのか、それとも何かを隠しているのかわかりませんが・・・他の文章のように断定口調で書かないのは、それはこの筆者の信念というか「嘘をつきたくない」という強い意志の表れではないかと感じました。
彼は日露平和条約締結に向けて鈴木宗男氏と一体になって邁進していた方なのですが、その手法は「北方領土への支援活動を通じて領土での日本の影響力を強める」という戦略でした。これは戦後の日本の隣国戦略に通じるもので・・・佐藤さんはどうだったかわかりませんが、少なくとも鈴木氏の方は、最終的には平和条約締結により自民党橋本派として「中国に続く新たな外交基盤」が欲しかったんだろうなと自分は思っています。その外交戦略が今の日本では叩きに叩かれているわけなんですが・・・彼らは確かに有能な政治家・官僚でありましたが、やはり「時代の流れについていけなかった」人達であるのも確かなのかな・・・と。